老舗酒蔵 集客と再生活用 天吹酒造

天吹 天井桟敷ギャラリー2

創業元禄元年、天吹酒造の蔵、母屋、庭などを改修工事を担当させていただきました。平成26年国の登録文化財に認定されました。

 13年前に、「天吹酒造」酒蔵修復のご相談をいただきました。敷地内にある数々の建物や中庭を、数年に渡り改装や修復工事を進めてまいりました。

 

築170年程の母屋(改装後)正面玄関

改装前までは、不特定多数の方がいらっしゃるようなことが少なく、ご自宅と事務所機能が主の母屋でした。季節労働者用の食堂や大きな通路、倉庫などがあり、2階は住まいとして増築されていました。大改修工事を期に、蔵開きや試飲会、ギャラリーなどを開催されますので、そのようなことに対応できる空間創りが必要でした。 正面玄関で特徴的なのは、 ・玄関扉(材料は長年、蔵に眠っていた楠板)・ステンドグラス ・レトロ木製看板・樽 ・ひっそりと塀に隠れていた恵比寿様に玄関口に移動して鎮座していただきました解体の際に痛んでいたので取り替えた梁を、 加工しなおして再生しています。 犬走りはグリ石を配置、腰壁は酒樽板を再活用しました。

母屋 土間(試飲販売所)

旧事務所や旧自宅玄関などの内装解体を進めていくと 創建当時の姿が現れてきました。 すっきりとしていて、風や光の通りが良く使い勝手のよい 空間です。時間の経過と共に、その都度改装され変化していく これは仕方の無いのことです。 しかし、建物としては無理が生じてきます。 それは、痛みの原因になります。私がご縁をいただく建物は、 改装すると、殆どが自然と昔の元の姿に戻ります。 使い勝手が良くなり心地よくなります。

試飲カウンター

風神蔵で痛んでいた梁を再活用しました。土間は、 赤土とセメントと石を混ぜてちょっと固めです。 不特定多数の方が歩くには痛みにくく丁度よいようです。

母屋 天井桟敷(ギャラリー)改装前

倉庫として長持ちなどが置いてありました。 一部は、子供部屋に改装されており味わい深い部屋でした。屋根替えに合わせて、天井を取り外し化粧垂木仕上げにしました。梁や柱は、古色塗り。 床が高く頭を打ちそうだったので、一段下げ板張りとしました。 壁は、漆喰仕上げ。ギャラリーとしての活用を考え、照明やピクチャーレールなどを取り付けています。玄関上に当たる部分は、床を取り外し吹抜けにしました。 開放感の演出、1階と2階の連続性を感じます。 ご来場されるお客様の上を歩かない意味でも有効でした。ギャラリーや酒の会などのイベントで活用されています。

焼酎蔵

築100年程の焼酎蔵(改装後)です。漆喰壁の塗りなおし と 照明器具取付、 長持ちを再利用した扉設置を行いました。煉瓦造りと木造真壁造りの混合建物。 西方沖地震の際は、震度6弱を受けましたが被害はまったく ありませんでした。吟醸酒粕焼酎を大きな甕に貯蔵してあります。 甘い香りが立ち込めており、酒蔵さしさが際立ちます。避難用の木舟を、足湯用に手をいれてイベント時に使用しております。

風神蔵

土間と吹き抜け風神蔵(酒製造蔵)の改装後の土間です。この蔵は、酒造りの工程ではとても重要な仕込みを行います。 小さなステンレスのタンクがずらりと並び、搾り機や麹室、 原料処理室、冷蔵庫、洗米、洗い場など酒造りの中心にな ります。た、蔵見学の方(卸、酒販店、料飲店、一般、学生)が いらっしゃいますので、作業効率を優先しながらも雰囲気 や安全性も配慮しなければなりません。蔵開きや、大試飲会の際は、一度に200名程のお客様が入る 大きな蔵です。蔵人さんたちが日々清潔にされてますので、 清々しい空気が立ち込めています。

風神蔵

2002年に大改装工事は始まりました。酒蔵内には幾つもの建物があります。 その一つ、風神蔵(酒製造蔵)の改装後の画像です。昔は、 2階から仕込みをされていたり、道具倉庫であったり、 季節労働者である蔵人の寝床があったりしていました。改装を期に、イベントスペースと古道具展示スペースと して生まれ変わりました。

風神蔵 外観

改装前より、出入口開口部が広くなりました。 また、瓦の葺き替えと漆喰壁も新たになりました。

妻壁には、鏝絵(こてえ)を施しました。 「風神さま と 天吹山」です。 私が絵を描いて、左官さんと一緒に足場に上り 試行錯誤の末、完成しました。陽の光で、陰影が変わっていきます。 夕日では、オレンジ色に染まります。真っ白だった鏝絵も、 10年以上の時を経て色焼けして立体的になってきました。冬の妻壁に写る影は、落葉したケヤキの枝です。 この影が、時間と共に動いていきます。 冬は、空気がピンとして冷たく澄んでいます。 青空と白壁が清々しく大好きです。

国の有形登録文化財

その後も、蔵開きや酒の会の企画を担当させていただきながら、貢献できるなにかを探していました。ここ数年改修工事が落ち着き始めましたので、蔵元に国の登録有形文化財に申請してみてはどうかと提案したところ、蔵元も町も乗り気になってくださって、約1年がかりで調査研究が進み、この度、登録となりました。とても幸せです。

以下、佐賀新聞webより

天吹酒造主屋などが登録有形文化財に国の文化審議会(宮田亮平会長)は、三養基郡みやき町東尾の酒造会社「天吹酒造」の主屋や仕込蔵など関連施設9件を登録有形文化財にするよう下村博文文科相に答申した。明治、大正時代から良好に残る建造物群が老舗酒造場の様相を伝え、地域の歴史的景観にも寄与していると評価された。答申されたのは、明治期からある主屋、仕込蔵、旧蔵人用炊事場煙突、大正期の離れ座敷、貯蔵庫(旧麹室(こうじむろ))、地下貯蔵庫、貯蔵庫(旧白米倉庫)、瓶詰工場(旧仕込蔵)、旧酒造蔵煙突。増築や改修した施設もある。

リニューアル後
中庭1
母屋入口
風神蔵 新規製作鏝絵
風神蔵吹き抜け
古梁再生 試飲カウンター
アクセス
お客様の声

質問1  古い蔵を近代的な建物にせず古民家再生した理由を教えて下さい。
       またメリットとデメリットを教えて下さい。

・弊社は1688年創業で300年以上の歴史を持つ酒蔵です。確かに新しい建物に建て替えた方が現在の酒造りの進化にも対応しやすく効率化は図れるのかもしれません。しかし先祖代々受け継がれてきた酒蔵を時代に合ったかたちに変革させ、後世に残す事が伝統であり私たちにとって重要なことであると考え古民家再生を選択しました。

 メリット・・・時代とともに歩んできた伝統的な歴史感あふれる酒蔵の雰囲気は古民家再生でしか作りだす事はできない

 デメリット・・・新築に比べると構造的な制約は出てくるので使用用途等の変更を考えるなどが必要

 

■質問2  槌の音に仕事を依頼した理由を教えて下さい。
       また依頼を継続している理由を教えて下さい。

依頼の理由・・・古い構築物なので日本古来の伝統建築技術にも精通している必要があり、一度に総ての工事を行う予算もなく長期に渡る計画を立てなければならなかったがお互いに方向性を十分にすり合わせる事ができた事が大きい。

 継続の理由・・・私たちの会社の目指したい方向性を十二分に共有できており頼りになる。

 

■質問3  蔵の再生前と現在の来場者数や売上、情報発信量に変化はありますか?
       また、どのような客層が来場されますか。

 再生前は蔵見学等を受け入れられる態勢ではなかったが、再生後は年々訪問客も増加し売上、情報発信量とも順調に推移しています。女性客の訪問が飛躍的に増え、最近は海外からの訪問客が増えてきました。

 

■質問4  再生工事から10年以上経過して、建物の使い勝手や印象はいかがでしょうか。

  あたかも昔からそのかたちであったかのような空気感が漂っておりさらに古民家の魅力がました様に感じています。